定年を待たずにUターンして田舎暮らしを決意したおやじのブログ

ネギ栽培初年度を振り返って

ネギ栽培1年目、いやまぁ農業1年目があわただしく過ぎていきました。ここで初年度を振り返り、うまくいった事や失敗を整理したいと思います。「失敗は貴重な気づきです」と言ったのは昔の上司の口癖だったなぁ。そのお言葉を意識してか人一倍失敗が多い人生を送っている気がする。そんな失敗の達人ともなると、ミスするとそれだけ伸びしろがあるのだと考え、失敗してもうれしくなってしまうくらいである。ただし、同じ失敗を繰り返すとめちゃめちゃへこんでしまうが。。。

目次


播種(温床)・育苗

たろへーが知っているネギ農家さんのすべてが自家育苗でやっておられますが、ネギ農家全体をみると苗を買って栽培される方もおられるようです。結局は施設(育苗ハウス)や器具のの準備ができるかどうかで決まると思います。比較してはいませんが、苗を買うコストと種から育苗するコストを比較すると苗購入が高いということでしょう。しかし育苗ハウスや播種セット、温床、そして液肥なども育苗コストになるため、一概に自家育苗が安く済むかどうかはわかりません。ですが、定植の日程を睨んで播種の日程を決められることや、大苗にしたいなど苗屋さんではできないきめ細かさは自家育苗でなければできないことだと思います。


 播種について

畑への定植の効率や育苗のしやすさを考えると育苗箱を使った栽培となると思います。育苗箱は水稲の箱と同じものを使用していますが、ペーパーポットというハニカム状のセルを紙でつなげたものを育苗箱にセットし育苗しています。苗箱1枚あたり264セル、1セル当たり2粒~3粒の種が入ります。一連の作業を播種セットを用いて行ってます。流れは、①ペーパーポットを展開枠を使い広げる ②土を入れる ③土に穴をあける ④種を落とす ⑤覆土して完成。播種セットはかなり高価なものですが、無いとおそらくうまく種まきができないでしょう。一反歩60~70枚の播種で慣れれば一人で2時間位でできると思います。 これを温床という電気ヒーターのマットに置いて発芽を待つわけですが、我が農園の温床はハウスの中に更にトンネルを作り、地上から5センチほど空間を持たせた上に断熱材ーヒーターマットー苗箱の順に置いていきます。電気ヒーターは2枚用意しますが、1枚が畳一畳分なので平積みだと12枚、2段積みで24枚はいけそうです。上の段の苗箱には乾燥を防ぐために不織布を被せましたが、あまり変わらないような気もします。発芽は積算温度で100℃を超えるのが目安。トンネル温床の気温は真冬でも晴れれば30℃を超える時があるので、おおよそ6日で発芽してました。ものの本で読んだところ最低気温は5℃以上が望ましいとのことですが、外気温が氷点下となる夜中などは5℃以下になる場合もありましたがあまり気にしません。

ちなみに積算温度の計算の仕方もなんかいろいろあるようですが、たろへー式は10分ごとに記録される温度計の平均値で割り出しましたが、それで正しいかどうか。。。


育苗

それぞれの苗箱で4割以上発芽したものから外に出して、以後温床の外での育苗となります。これもあまり自信がないですが、そのうち苗の大きさがそろってくるので良しとしています。一度どうしても発芽ムラが直らないことがあり、原因を探ったのですが、どうも播種後の水やりにムラがあったのではという結論に落ち着きました。それ以降は十分すぎるくらい水をかけて温床に入れるようにし、以降発芽ムラは収まりました。灌水するのも良いかと思いますが培土の養分が流れていかないかと勝手に考えて、たろへーは散水にしております。

育苗で最も重要なのが水やり、一回にたっぷりやる人と、一日に状態を何度も見ながら水やりする人といるみたいです。たろへーは一度にたっぷり、夕方確認して湿っているようなら翌日の水やりは控えるというやり方で水やりしてましたが、朝にたっぷり、晴れた日は朝と昼の2回、夕方は避けるなどと一般では言われていますが、結局のところなんなんだろう。夕方土の状態を確認して、乾燥しているようなら翌朝水をやる感覚でやっていましたが、どうやっても苗箱の両端が乾き気味になって成長も伸び悩んでいます。気温が低い時はそれでもそこそこ均一に成長してくれましたが、気温が高くなると苗箱の両端と真ん中との差が顕著に出てきてしまいました。端っこに多めに水やりをすると今度は真ん中の苗が消えていってしまう。。わけが分からん状態のまま定植を迎えたのでした。

注意すべき点をまとめると、水やりは平らな場所に置き端を多めにあげること、気温が低い間はそんなに気を使う必要はないが、高くなってきたらなるべくこまめに水をやること。ハウス内の気温は日が差すと急激に上がるので必ず換気。それでも温度が高い時は日よけを設けるなど工夫する。土が乾いてしまったときは灌水で全体に水を行きわたらせる。一度乾燥した培土は水をはじいてしまい中まで吸わなくなる。

育苗中2回ほど床屋のように葉を切りそろえます。これをすると苗が太くなる

定植

たろへーの畑は粘土質の赤土で、一度ぬかるんだらしばらく畑に入れないほどです。そして、乾くとカチカチの土となり、トラクターで耕耘してもゴロゴロの土の塊になってしまい、とてもまともな定植はできない状態になるのです。定植に使うひっぱりくんは矢じり形状の爪で細い溝を掘り、ネギの苗を溝に並べた後後輪部分で土をかける仕組みになっており、文字通り手で引っ張ることで連続して作業ができる機械です。が、畑が粘土質だと溝もうまく掘れず土はゴロゴロで、苗がうまく植えられないのです。そんな時はもう一度手で植えなおすのですが、手で植えるほうが多いんじゃないかというくらいの作業になってしまいます。ですのでなるべくゴロゴロ土にならないように何度も耕耘するのですが、一度固まった粘土質の土はそうそう細かくなってはくれません。ある程度妥協して定植することになります。ちなみにネギの圃場は4か所あるのですが、そのうちの2か所が粘土質です。

その粘土質の畑でも雨が降って固まるまでの期間が唯一土を細かく耕耘できるチャンスとなります。長雨の直後はぬかるみになるため当然無理ですが、数日晴れが続いて表面が乾いてきたらいい頃合いです。しかし慌ててはいけません。下層の土はまだ柔らかく強引に耕耘すると粘土の塊を作ることになります。一度浅めに耕して様子を見た後、本来の耕深にしていきます。石灰や元肥を入れながら4回くらい耕耘したかな、ようやく定植できる状態にできました。北陸の気候は、冬の間は雨続きで畑に入ることはできず、晴れが続いてくる春先まではなにも手を付けることが出来ない。太平洋側の気候がうらやましく思います。


ネギの定植は植溝掘りから始まります。普通の野菜は畝を立てたその上に苗を植えていきますが、ネギは逆で溝に植えていくんです。理由は栽培期間中に株元に土をかけていき軟白部(ネギの白いところ)を長く取るためで15㎝ほどの深さで溝を掘っていきます。 畝間は溝の深さと関係しており、深ければ畝間は狭めに、浅くなれば広く取る必要があります。一般的に90㎝から110㎝の間ですが、たろへーの畑は溝深さ10㎝、畝幅1mとしました。

さて、ゴロゴロ土の定植は想像通り大変で、チェーンポットがうまく立たず土もかぶらない状態となって、ひどい畝では半分以上が補植、つまり手で植えなおす事態になってしまいました。


防除

低農薬を標榜しているたろへー。農薬を否定しているわけではないのですが、食味の追求とコストダウンを考えると農薬は少ないほうが良いという考えです。正直に言うと他の生産者との差別化も大いにあります。理想は無農薬ですが、きれいな野菜を多く栽培する技術がまだ伴っていないため、省力化とそこそこの収量を確保するにはここぞという時の農薬使用はやむを得ないかなと思っています。年々低減していきたいですがね。

昨年はネギの栽培初年度でほぼ教科書通りに農薬を使用しましたが、一般的な慣行農業に対して半分の量で済ませることが出来ました。除草は手で、害虫や病気などの予防目的の散布は極力抑えて兆候が見られたら実施するという方法で行った結果ですが、さび病、黒斑病に対して適切な農薬をチョイスできず散布しても効果がみられなかったいわゆる無駄な散布もあったのは反省です。もちろん農薬使用基準は守った上での事ですよ。 病気は圃場の水はけが悪いのが原因の一つと思うので、額縁を設ければもしかしたら低減できたかもしれません。

収穫

育苗の生育不足とゴロゴロ土での定植のおかげで収穫予定になっても良い太さにならず、時期が遅れたことにより雪害にも遭ってしまって計画収量の半分近くが規格外で商品にならず。直売と自家消費だけでは捌ききらんので困っていたところ、近くにフードロスを削減するをモットーにした八百屋さんが取り扱ってくれるとのこと。小規模な店舗なので量も限界がありますが、大変助かりました。

フードロス削減に貢献する マルシェレイートさん


収穫前の土寄せが遅れたよ

「ネギは軟白が命」 市場の規格は30㎝以上必要なので収穫1か月前に最終土寄せを終えなければなりませんが、生育遅れがたたって、9月後半になっても最終土寄せできる長さまで伸びていません。結局10月半ばまで日程が延びてしまいました。等級が下がりますが、11月中旬に無理やり初回出荷を実施。Mサイズが大半での出荷でのスタートでした。

収穫から出荷までの工程ですが、まずは収穫用ネットを使って1本ずつネギを手で引っこ抜きます。雨の後は土が柔らかく、簡単に抜けますが、土が乾いているとネギが折れてしまうことがあり、その時は畝を鍬で削ってから抜く作業を行っています。掘り取り機という便利なものもありますが、手掘りでも問題なく作業が行えたので使っていません。その後軽トラで調製場に移動。ここで①根葉切り、②皮むき、③選別、④結束、⑤サイズ別の箱詰めを行います。規格外はのちほど袋に詰めて直売所で販売します。工程の途中で失敗したものは家族の胃袋に納まります。

12月に入りネギも太ってきた物も多くなり、いよいよ本格的な出荷開始です。それでも1割ほど規格外(曲がりや軟白長不足)が出ます。規格外品の売り先は、直売所、前述のマルシェレイートさん、あとは子ども食堂位でしょうか。加工すれば売り先も増えると思いますが、設備投資と労力が見合わないと思います。結局一部は廃棄される羽目になってしまいました。ちゃんと揃いよく栽培しなくちゃいかんなぁと思いつつ、鮮度と味は全く問題ないものを廃棄するのはむなしいものです。

追い打ちをかけるように雪害に見舞われる

一部廃棄があるものの、順調に収穫できていました。12月の後半まではね。。。。 12月23日、加賀地方に大雪警報発令。翌日もやむ気配はなく、2日間降り積もる雪は非情にもネギをなぎ倒すほどになってしまっていました。積雪対策は事前に県の農業指導員からネットを掛けるやり方を紹介されていたのですが、雪をなめてかかってましたね。というか支柱やネットをケチってましたね。雪が積もった圃場は軒並みネギが折れ曲がってしまって、後の祭りです。また、雹も混じっていたので葉に斑点状のシミが残ってしまいました。時間がたてば新たな葉が生えてきて出荷できるようになるのですが、葉鞘から折れたものは使えずある程度の被害は免れません。年明けまた大雪が降ると予想されるので来年のためにも雪よけネットを設置。年明けの積雪でテストしましたが、まずまずの結果でした。先にやっておけばねぇ。。

新潟県には雪の下ねぎという商品があるが、まさに雪を掘っての収穫、つべたいよ~。でも甘いですよ!

結果は想定内かと

結果は初年度にしてはまあ予想通りというか、売り上げベースで計画に対し4割以下の結果となった。冒頭でも述べたように、失敗の連続でめちゃめちゃ気づきがあった1年目、もう悪くなりようがないのであります。そんな中でもうれしかったのが、お世辞でも食べてくれた人がそろって「おいしかった」と言ってもらえたこと。来年もガンバるぜぇって気合が入るってもんです。

収支は正直言って人件費抜いて計算してもギリギリ黒字(償却費込み)動噴やネットなどの初期投資があったとはいえ、人件費入れたら真っ赤ですわ。農業は儲かるというのはやはり投資をかけて大規模に行ってこそ言えることだとあらためて感じました。でもまぁ、栽培だけでもこれだけの良くなる要素が見つかっているので、マーケティングも工夫すれば小規模でもウハウハかー?と楽観的なたろへーでありました。次年度は利益率30%を目指して頑張ります。

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